フランスにおいて、鉱物油(ミネラルオイル)の包装材および一般印刷への使用が禁止されます。具体的な規制は、省令JORF n°0102 of 3 May 2022(外部リンク)に定められ、2023年1月1日から開始されます。鉱物油規制は、フランスのリサイクルに関する法律に関係しています。ここでは、「鉱物油の規制の強化」と「拡大生産者責任の義務」に対し、日本の企業に求められることを解説します。
2010年頃から食品中の鉱物油の有害性が懸念されはじめ、EUにおいて食品および食品と接触することを目的とした材料および成形品中のMOH(Mineral Oil Hydrocarbons:鉱物油飽和炭化水素)に関するEU勧告(EU)2017/84(外部リンク)が告示されました。その後、EFSA(EU食品安全機関)が、乳児用調整乳から検出されたMOAH(Mineral Oil Aromatic Hydrocarbon:鉱物油芳香族炭化水素)の汚染源および健康リスクを調査した結果、MOAHに生殖毒性および発がん性物質が存在することが確認されました。この調査報告などから食品中の鉱物油規制が喫緊の課題として浮上してきました。
フランスの環境関連の規制はCode de l'Environnement(環境法典)によって定められています。2020年2月10日に廃棄物と循環経済との闘いに関する法律(L2020-105(外部リンク))で環境法が修正され、包装および印刷への鉱物油規制が強化されることになりました(図1参照)。L.2020-105はフランスの環境法に対する修正法ですが、その根拠法はEU法の廃棄物枠組み指令:WFD(指令(EC)98/2008(外部リンク))の2018年の改正です。WFDは有害廃棄物と一般廃棄物の混合を禁止しており、有害インクで印刷した紙は古紙回収時に分別することは現実的ではないため、印刷インキ自体を規制して古紙リサイクルを促進するというものです。
図1 鉱物油規制の構成
包装および一般印刷への使用が禁止されている鉱物油に含まれる物質を指定する省令JORF n°0102 of 3 May 2022(外部リンク) の第1条で、鉱物油とは、インクの製造に使用される石油炭化水素に由来する原料から製造された油を意味するとしています。規制内容は、鉱物油から製造された印刷インクで、包装材(プラスチックを含む)および紙(カタログ、取説など)への印刷が規制されます。
L2020-105(外部リンク)の第112条で包装材への鉱物油の規制が追加されました。
環境法典D543-213(外部リンク)(広告チラシ・カタログの鉱物油制限)、環境法典D543-45-1(外部リンク)(包装上の鉱物油制限)の具体的な制限は省令JORF n°0102 of 3 May 2022(外部リンク)に規定されています。廃棄物のリサイクルを妨害する物質を含む鉱物油、または人間の健康にもたらすリスクのためにリサイクルされた材料の使用を制限する鉱物油に適用されます。
環境法典D543-213(外部リンク)およびD543-45-1(外部リンク)の鉱物油規制に関連する物質
ベンゼンやフェノールは直接的にこの定義に含まれませんが、有害物質であるため、廃棄物枠組み指令:WFD(指令(EC)98/2008(外部リンク))で規制されるため、印刷インクに入れることはできません)
分岐した炭化水素も含まれます。
1.2024年12月31日まで
2.2025年1月1日から
上記(2)L2020-105(外部リンク)の第112条で包装材への鉱物油の規制が追加されましたが、この適用条件を定めた法令が「JORF n°0102 of 3 May 2022」という省令になりますので、鉱物油規制の開始日は、「JORF n°0102 of 3 May 2022」の発効日になり、(5)の通り、段階的に規制されることになります。
フランスでは、「拡大生産者責任の原則(L541-10)」で廃棄物の防止および管理を提供またはこれに貢献することが要求されます。L2020-105(外部リンク)の第62条で、特定製品のリサイクルの徹底のための拡大生産者責任の原則の適用対象が21品目※3に拡大されました(L541-10-1(外部リンク))。
(以下略)
※1 ホテル、レストラン、映画館などから廃棄される包装材を含みます。
※2 書籍はR543-207(外部リンク)(定義)によって、題名をつけて出版された、図解されているかどうかにかかわらず、教育、思想および文化の普及を目的とした 1 人または複数の著者の心の作品の複製を目的とする印刷物と定義されています。
※3 3.は2023年4月24日にR2023-305(外部リンク) によって削除され1.に統合されました。そのため、拡大生産者責任の原則の適用対象は22品目から21品目となりました。
環境法典L541.10-10(外部リンク)で、拡大生産者責任の原則の対象となる製品の販売者は、購入者の要求に応じて、識別子(図2のTriman Logo:トリマンロゴ)によって購入者に通知しなくてはならないとしています。トリマンロゴは、消費者がゴミの分別方法を理解しやすくし、分類ごとに廃棄物として収集することを目的としています。L. 541-10-1 の対象となる家庭用として上市した製品は、家庭用のガラス製飲料包装を除き、この製品が仕分け規則の対象であることを消費者に通知する標識の対象となります。この表示義務は2022年1月1日に改訂されており、移行期間があります。
図2 Triman Logo
(引用: https://www.ecosistant.eu/wp-content/uploads/2020/10/picto-triman.svg(外部リンク))
拡大生産者責任の義務※3(リサイクル) | 鉱物油規制※4 | |
---|---|---|
家庭で消費され、または使用される製品の包装 | 2022年1月1日以降 | 2023年1月1日以降 |
専門家が消費または使用する製品を販売するために使用される包装 | 2025年1月1日以降 | 2025年1月1日以降 |
ケータリング活動の専門家が消費または使用する包装 | 2023年1月1日以降 | 2023年1月1日以降 |
印刷された紙(書籍を除く) | 2023年1月1日以降 | 2025年1月1日以降 |
※3最終製品が家庭用(ガラス製飲料包装を除く)であれば、トリマンロゴの貼り付けが必要
※4 L2020-105の適用条件の具体的制限は省令JORF n°0102 of 3 May 2022による
輸入者(フランス企業)は輸出者(日本企業)にビジネス契約として遵法要求を行います。輸出者はサプライヤーに調達基準などで、鉱物油フリーであることの遵法宣言(Declaration of Compliance)または不使用証明を求める必要があります。
拡大生産者責任の対象製品22品目L541-10-1(外部リンク)をフランスに輸出する場合、包装材、製品それぞれに表示が必要になります。
最終製品が家庭用(ガラス製飲料包装を除く)の場合、
リサイクル等の義務は、フランスの生産者または輸入者が対象であり、日本企業は対象ではありません。しかしながら、フランスの輸入者は規制に適合していないと輸入できません。
包装材が複合材の場合は、上記のようにトリマンロゴに加えて仕分けを説明するタグ(分別マーク)が要求されます。(【参考】分別マークの例:https://www.ecosistant.eu/en/triman-logo/(外部リンク))分別マークは輸入業者とデポジット契約する「エコ組織」によります。よって、日本企業は、フランスの輸入者を介して分別マークの確認が必要となります。
※当解説は法規制に関する都産技研の見解等を代弁するものではありません。関係機関発行の原文によりご判断ください。本解説の情報に基づいて行った行為により生じたいかなる結果に関しても、都産技研は責任を負いかねますのでご了承ください。
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