都産技研では、騒音レベル測定や吸音率測定などの定型的な音響性能の依頼試験の他、対象となる製品の特性に合わせたオーダーメード型技術支援や共同研究をご提案しています。
本シリーズでは、そのような特色ある測定事例の一部をご紹介いたします。第2回の本記事は、降雨時に生じる雨音の評価方法について、傘の雨音を事例として解説します。
(第1回:個室型執務ブースの遮音性能の評価についての記事はこちらをご覧ください)
光音技術グループ TEL. 03-5530-2580
傘を使用している時に聞こえる雨音は、視覚障害者の方にとっては他の音の妨げとなる場合があります。そのため、傘の雨音の静音化に向けた測定の需要があります。傘の雨音の測定を行う際に課題となるのが、実験室における水の使用です。実験室や測定機器は水に弱いため、極力少ない水の量での試験が必要となります。
都産技研ではISO 10140-5*1の規格を参考とした降水用タンクを使用した試験方法を実施しています。実際に降水用タンクを使用して測定している様子を図1に示します。本装置を使用することで、限られた範囲内にのみ降雨状態を再現することができるため、実験室での雨音評価を可能としました。
本装置による雨音測定時の様子を動画1に示します。
*1 ISO 10140-5 Acoustics — Laboratory measurement of sound insulation of building elements —, Part 5:Requirements for test facilities and equipment, Annex H: Specification of heavy and intense rain — Example of a tank with perforated base
図1 降水用タンクを使用した傘の雨音測定の様子の写真
動画1 雨音測定時の様子
本装置を使用して収録した2つの傘(市販のビニール傘、静音タイプの傘)の音を動画2で示します。これより、雨天時に聴感される雨音を再現できていることが確認できます。
動画2 降水用タンクで収録した雨音
続いて、これらの雨音の分析結果の一例を図2に示します。この事例では、静音タイプの傘は市販のビニール傘と比較して、A特性時間平均音圧レベルで9dB低減できたことがわかります。また、人が感じる音に対する印象の違いを評価する指標である心理音響評価量のラウドネス*2を用いることで、聴感での音量が約50%低減したことを示すことができます。このように、降水用タンクを用いることで、降雨時に生じる雨音の静音性を定量的に評価できます。
*2 心理音響分析システム ー製品音の快音化へ向けた開発支援機器 ー(TIRI NEWS 2021年5月15日号)
図2 A特性時間平均音圧レベル(dB)とラウドネス(sone)による雨音の比較
本記事では、製品の特性に合わせた音響性能の評価事例として「傘の使用時を想定した雨音評価」の方法についてご紹介しました。この他にも、周波数分析等の詳細な分析を実施することで、雨傘の構造の改善に関する技術支援や、共同研究も実施可能です。
なお、屋根材等、傘以外の雨音を生じる製品の評価のご相談についても、お気軽にお問合せください。
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