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住環境におけるホルムアルデヒドガスのモニタリングを目的とした生化学式ガスセンサ

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

王 きん[発表者]、月精 智子(地域結集事業推進室)、荒川 貴博、工藤 寛之、三林 浩二(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)

1.はじめに

  近年、住宅の高気密化に伴い、内装材や家具等から放散するホルムアルデヒド(FA)によるシックハウス症候群等の健康被害が指摘されている。FAは室内濃度指針値(厚生労働省)の80 ppb以下でもアレルギー疾患等のリスクを増大させることから、安全・安心な住環境を保つためには、室内のFA濃度をモニタリングし、適切に管理する必要がある。しかし、現在市販されているセンサは選択性が低い、感度が足りないといった課題がある。そこで、本研究では生体触媒である酵素を利用することで、選択的にFAを連続計測可能な生化学式ガスセンサを開発し、建材からのFA放散量を計測し、環境中のFA評価への有効性を検討した。

2.実験方法

  FAの認識素子としてホルムアルデヒド脱水素酵素(FALDH)を用い、反応生成物のNADHの蛍光特性を利用することでFAを高感度に連続モニタリングする新しい生化学式ガスセンサ(バイオスニファ)を開発した(図1)。ポリマーによる包括法にて作製したFALDH固定化膜を、フローセルを取り付けた光ファイバプローブ先端に装着し、フローセルにNAD+を含むリン酸緩衝液を感応膜に常時供給するとともに反応生成物等の洗浄・除去を可能にした。実験では、まず標準ガス発生装置にて調整したFAに対するセンサ特性を評価した。次に本センサにて各種建材から放散するガスをJIS規格に基づいてサンプリングし、センサ出力からFA放散量を算出した。

光学式バイオスニファの検出原理
図1 光学式バイオスニファの検出原理

3.結果・考察

  開発したセンサの特性評価を行った結果、FA濃度に応じたNADHの蛍光強度の著しい増加と安定が確認され、FA負荷を停止した後、リン酸緩衝液のNADH洗浄効果による蛍光強度の減少が観察された。センサの出力とFA濃度の関係を調べたところ、2.5から15000ppbの範囲でFAの定量が可能であった。FALDHを認識素子として用いることで本センサはFA以外のガス種には殆ど応答を示さない高い選択性が確認された。また、本センサをコンクリート型枠用合板など建材から放散するFAの計測に適用したところ、FA放散量区分に基づいた結果が得られた。また実験室内の空気を本センサに導入し評価したところ、約15ppbのFAが検出され、職場環境や住環境のFA評価への可能性が示唆された。

4.まとめ

  FAを高感度・選択的にモニタリング可能な生化学式バイオスニファを開発した。特性評価の結果、FAに対する定量範囲は2.5から15000ppbと高い感度と広いダイナミックレンジが得られた。また、本センサにて建材からのFA放散量計測並び室内のFA評価を行い、センサの有効性を確認した。

 


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