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水拡散膜を用いた冷却シートの開発

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

飛澤 泰樹[発表者]、清水 研一(材料技術グループ)、本田 壽男(本田技術士事務所)

1.はじめに

  近年、夏場の熱中症患者の増加や電力供給量の減少に伴い、電力を使用しない簡易冷却製品が注目されている。製品例としてはネッククーラーや保冷材入りペットハウスが上げられ、類似製品の特許も多数出願されている。これらの既存特許では製品に吸水性を持たせるために、吸水性ポリマーを用いた発明が多い。しかし、吸水性ポリマーは吸水性に優れる反面、膜形状の保持や衛生性に不安がある。そこで、本研究では、吸水性のシリカを添加した水拡散膜及び、その水拡散膜を搭載した冷却シートを開発することを目的とした。

2.実験方法

  水拡散膜の作製には、ポリエチレンプロピレンゴム(JSR製EP57C)、シリカ(東ソー・シリカ製VN-3)及びパラフィン系オイルを用いた。上記材料をミキシングロールで混練した後、0.5mm厚の水拡散膜を作製した。そして、補強目的で水拡散膜に帆布を貼り付け、中心部に注水口を取り付けた後、四辺をポリエチレンシートと熱融着することで冷却シートを作製した(図1)。その冷却シートの冷却効果を検証するために、屋根裏側に温度センサーを貼り付けた木製巣箱の上に載せた後、35℃の環境下で温度変化を測定した(図2)。

 

冷却シートの構成
図1 冷却シートの構成

温度変化測定風景
           図2 温度変化測定風景

3.結果・考察

  冷却シートの温度変化を測定した結果、木製巣箱の屋根裏側の温度が5.1℃低下した(図3、初期の温度低下は冷却シート内の水温が低いことによる)。これは、水分が蒸発する際に接触物から熱を奪う作用(気化熱冷却)に起因していると考えられる。

35 ℃下における屋根裏側の温度変化
図3 35℃下における屋根裏側の温度変化

4.まとめ

  本研究より、シリカを含有する水拡散膜の冷却シートへの応用可能性が示された。今後は、耐候性や耐カビ性を評価するとともに、大面積シートによる冷却効果の確認等を行いたいと考えている。

 


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