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促進酸化法による水中有機物質の分解処理

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

田熊 保彦[発表者]、杉森 博和、安藤 恵理(環境技術グループ)

1.はじめに

  排水処理等に使用される技術として、促進酸化法(Advanced Oxidation Processes: AOPs)と呼ばれるものがある。これは、強力な酸化作用を持つラジカル(OHラジカル)を発生させ、これにより有機物質を酸化分解する方法で、難分解性有機物質の処理に使用される。AOPsにはいくつかの方法があるが、それぞれの処理特性の違いの比較はあまり行われていない。そこで、本研究では、いくつかの処理対象モデル物質に対し、ソノケミカルリアクション(超音波により引き起こされる化学反応)、オゾン酸化、フェントン反応、マイクロバブルの4つのAOPsを単独もしくは併用して適用し、その処理特性の違いを調べた。なお、紙面の都合から本要旨では今回選定したモデル物質1つであるp-ニトロフェノールの、ソノケミカルリアクションによる処理の結果についてのみ記述する。

2.実験方法

  超音波振動子を水浴中に設置し、その上にガラス容器を設置して、この中で反応を行った(図1)。なお、このガラス容器は超音波照射中に位置がずれないよう固定されている。処理対象として0.5mmol/Lのp-ニトロフェノール水溶液を調製し、この50mLを反応に供した。反応温度は20 ℃である。
  反応開始後、所定の時間ごとに反応溶液中から試料を採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により残留p-ニトロフェノール量を測定した。また、一部の試料については全有機体炭素(TOC)を測定し、有機体の中間生成物及び分解生成物の有無を判定した。

反応装置
図1 反応装置

3.結果・考察

  図2にp-ニトロフェノール濃度とTOCの経時変化を示す。この図から、p-ニトロフェノールはソノケミカルリアクションにより分解可能であり、その反応は一次反応に従うことが分かる。また、TOCについてもわずかではあるが減少しており、p-ニトロフェノールが無機炭素にまで分解している可能性が示された。ただし、p-ニトロフェノールの減少速度に比べて、その減少速度が低いことから有機体の中間生成物もしくは最終生成物が存在している可能性も考えられる。

p-ニトロフェノールの経時変化
図2 p-ニトロフェノールの経時変化

4.まとめ

  ソノケミカルリアクションによりp-ニトロフェノールは分解された。ただし、p-ニトロフェノールの分解速度よりもTOCの減少速度のほうが低かったことから、反応中に有機体の中間生成物もしくは最終生成物が存在するものと考えられる。

 


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