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LED照明器具の評価方法…電気分野からのアドバイス
枦 健一[発表者]、小林 丈士(電子半導体技術グループ)、宮島 良一(技術経営支援室)、三上 和正(実証試験セクター)
1.はじめに
温室効果ガスの削減が求められ、国民の省エネ意識が高まりLED照明器具の需要が増加する中、2011年3月11日に東日本大震災が発生した。震災の影響で原子力発電所からの電力供給源を一部失い、企業から一般家庭に至るまで節電は非常に大きな課題となっている。身近な節電方法として、一般照明器具からLED照明器具への交換が注目されている。しかし、LED照明器具は比較的新しい製品であり、一部の規格において適用外となっているため性能の劣る商品も市場に出回っている。本稿では、一般照明器具に対する電気分野の評価方法を紹介し、その評価方法を蛍光灯とLED照明器具に適用し比較検討した。
2.電気分野の評価方法(EMC規格)
電気分野の評価方法として、安全性、電気的基本性能及びEMC等の試験がある。表1に各EMC規格に対応した試験を示す。EMCとはElectro Magnetic Compatibilityの略で電磁環境適合(両立)性という意味である。一般照明器具の規格としては、国際規格のCISPR15、電気用品安全法(以下、電安法)の省令第1項と2項、日本規格のJISがある。電安法の省令第1項(第7章)は国内、第2項(J55015)は国外向けの規格である。ただし、いずれも現段階で小電力のLED照明器具は適用外となっている。
- 高調波試験とは、消費電流波形をフーリエ変換した時の各高調波次数の電流値を測定する。
- 放射エミッション試験とは、製品から放射するノイズを測定する。
- 雑音端子電圧試験とは、電源線を伝導するノイズを測定する。
- 雑音電力試験とは、電源線から放射するノイズを測定する。
- LLA(Large Loop Antenna)とは、製品から放射する比較的低周波のノイズを測定するアンテナである。
表1 一般照明器具の規格対応表
3.試験方法
本稿では、無作為に市場から蛍光灯Aの1種類と直管型LED照明器具BとCの2種類を購入した。実施した試験は、高調波、放射エミッション、雑音端子電圧、雑音電力である。LLA測定結果については本稿では省略する。いずれも安定化電源(CVCF)を用いて、100V/50Hzを供給した。高調波の規格値はJIS C61000-3-2を適用した。それぞれの試験品の電流値が安定するよう、通電して約10分後に測定した。放射エミッションと雑音端子電圧の規格値は、CISPR15のClassBで実施した。ClassBとは家庭環境を想定した限度値である。雑音電力は電安法の省令第1項で実施した。
4.試験結果
蛍光灯をA、直管型LEDをBとCで示す。表2に蛍光灯と直管型LEDの電気的基本性能の比較表を示す。消費電力、力率、消費電流で比較した。直管型LEDは、蛍光灯と比べると力率が多少小さいが、消費電力は約1/3から2/3である。高調波はJIS C61000-3-2に基づいて高調波電流の規格値で判定すると、蛍光灯はPassしたが、直管型LEDではFailとなった。しかし、25W以下の照明器具の場合に規格では、消費電流波形および3次と5次の高調波電流値の計算が規定値内であればPassと判定できる。再確認したところ直管型LEDの高調波は2種類ともPassと判定できた。
図1に放射エミッション測定結果を示す。蛍光灯は30-33MHz付近で規格値を超え、直管型LEDは30-300MHzの全域でBが大幅に規格値を超え、Cは全域で規格値内であった。
図2に雑音端子電圧測定結果を示す。蛍光灯は0.2MHz以下で規格値を超える部分があり、直管型LEDは0.03MHz以降の広範囲に渡ってBは規格値を超え、Cは規格値内であった。
図3に雑音電力測定結果を示す。30MHzから120MHz付近の周波数帯でBが規格値を超えた。
電気性能 / 照明器具 | A | B | C |
---|---|---|---|
消費電力[W] | 37.7 | 16.4 | 24.1 |
力率 | 0.99 | 0.92 | 0.93 |
消費電流[Arms] | 0.379 | 0.178 | 0.26 |
高調波の判定 | Pass | Fail | Fail |
図1 放射エミッション測定結果 垂直 | 図2 雑音端子電圧測定結果 | 図3 雑音電力測定結果 |
5.まとめ
直管型LED照明器具を電気分野で評価するため、一般照明器具に対する規格を適用した。そして、蛍光管と直管型LED照明器具を用いて各EMC評価試験を実施し、比較検討した。消費電力では、直管型LED照明器具の方が小さい。しかし、直管型LED照明器具の中には一般照明器具のEMC規格値をはるかに超える製品があり、市販されている。EMC規格値を超える製品は無線、ラジオ、TV等の放送波を妨害する可能性がある。そのため、直管型LED照明器具へ取り替える際、省エネや節電のための消費電力だけでなく、ノイズ発生が抑制されていることを考慮することも重要な選択要素である。