本文
LED照明器具の測光方法と光学特性
山本 哲雄[発表者] 、岩永 敏秀(光音技術グループ)
1.はじめに
高効率、長寿命な特長をもつLED照明が次世代の省エネルギー光源として注目されていますが、東日本大震災後の節電意識が高まりとともに一層、注目を集めています。従来に比べると価格も低くなり、本格的な普及の時期に入ってきました。LED照明器具は、従来の光源とは分光分布や形状等が異なるため、適用に注意が必要です。本報告では、照明用光源の測光方法の概要とLED照明器具の測定例について紹介します。評価した照明器具は、主に局部照明に用いられる、LED照明器具(電球形、ダウンライト形、スポットライト形)、蛍光ランプ(電球形、直管形)、白熱電球です(図1)。評価項目は、全光束、照度、配光、分光分布、演色評価数です。
図1 光学特性を評価した照明器具
2.光束測定と照度測定
全光束の測定方法は、拡散反射率の高い白色塗料(硫酸バリュウム)を球の内面に塗布した球形光束計を用います。球形光束計の中心に設置した光源から放射された光は球内部で多重反射し、内壁を均等に照明します。球の受光窓に設置したV(λ)受光器の出力は全光束に比例します。全光束を値付けされた標準電球と試料光源の出力を比較測定することにより全光束を求めることができます。
照度は、水平面照度を測定します。光源を任意の高さに設置し、照度計を机上面または床面の指定した位置に置いて測定します。照度測定点を増やして多点測定することで、照度の分布図を作成することもできます。
図2は、光束測定と照度測定の結果から、光源効率(lm/W)と単位消費電力当たりの直下照度(lx/W)の関係を求めた図です。LED照明器具(電球形、ダウンライト形、スポットライト形)は、光源効率(lm/W)の点で、蛍光ランプに及ばないものが多いですが、単位消費電力当たりの直下照度(lx/W)では、電球、蛍光ランプを上回っています。そのため、特にスポット照明の用途に適していると考えられます。
図2 光源効率と照度の測定結果 照度は、光源の1m直下の測定値を示す
3.配光測定
光源または照明器具から放射される光の各方向における光度の分布を配光といいます。この光度の分布を適当な角度間隔で測定して、光源または照明器具の配光分布を知るための測定を配光測定といいます。配光測定は、光源から放射する光を受光器の角度を変化させながら測定するため、光源を固定してその周囲に受光器を回転させて測定するか、受光器を固定して光源自体を回転させるかのいずれかの方法をとります。
それぞれ照明器具の配光特性の測定結果を図3に示します。ダウンライト形LEDの配光は、下向きに急峻となっています。電球形LEDについても電球や電球形蛍光ランプに比べて指向性が強く、照明器具の真下方向の照度が大きくなっています。
図3 配光特性の測定結果
4.分光分布測定と演色評価
分光分布測定は、分光放射計またはマルチチャンネル分光器を用いて、光源から放射される光の波長毎のエネルギー量を測定します。標準電球として、波長毎に分光放射照度を値付けされたハロゲン電球を使用しています。演色評価数は分光分布から計算で求められます。
マルチチャンネル分光器を用いて測定した照明器具の相対分光分布を図4に示します。また、光源効率(lm/W)と平均演色評価数の関係を図5に示します。図4に示すように、LED照明器具は、異なる発光方式のものが市販されています。ここでは3種類の発光方式の製品を測定しました。図5から、LEDの発光方式別に分類すると、紫外LED+RGB蛍光体のタイプ(Ra=98)、青色LED+RG蛍光体のタイプ(Ra=79から94)、青色LED+黄色蛍光体のタイプ(Ra=65から85)の順で平均演色評価数が高いことが分かります。また、平均演色評価数が高いLEDほど、光源効率が低くなる傾向を示しています。JIS Z 9125では,照明される場所(作業)毎に演色評価数の推奨基準が決められ,その場所に適した演色評価数の光源を用いることが求められます。例えば,一般のオフィス照明では、平均演色評価数を80以上とすることが推奨されています。その基準を満たし、かつ光源効率50(lm/W)以上に限定すると、青色LED+黄色蛍光体、青色LED+RG蛍光体のタイプの発光方式が一般のオフィス照明用としては望ましいと言えます。
図4 分光分布の測定結果 | 図5 平均演色評価数の測定結果 |
5.まとめ
光音技術グループでは、新本部(青海)に、LED用球形光束計や分光放射計の他、配光装置、測光ベンチ、分光応答度測定装置などを導入して、照明の様々な光学特性評価のご要望にお応えします。多くの皆様のご利用をお待ちしています。