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電源ケーブルに起因する放射ノイズの影響と評価:LED照明装置での実証実験
大橋 弘幸[発表者]、原本 欽朗、高橋 文緒(電子・機械グループ)
1.はじめに
放射エミッション測定は供試装置の筐体およびケーブルからの放射ノイズ(妨害電磁波)の測定を行う。しかし測定サイト固有の電源ケーブルの影響を受け、測定サイトごとに30から300MHzの測定結果が異なることが知られている。本研究は多摩テクノプラザの二基の電波暗室間において生じる測定結果の差について調査し、電波暗室固有の電源ケーブルに起因する放射ノイズの影響を評価することを目的とした。また、LED照明装置は電源ケーブルからの放射ノイズが測定結果に及ぼす影響が大きいため測定方法について検討した。
2.電源ケーブルの影響の評価
多摩テクノプラザの電波暗室Aと電波暗室Bにおいてアンテナ距離3mでLED電球の放射エミッション測定を行った。測定結果を比較し、測定結果の差異を調査した。測定結果を図1に示す。60MHz以下の帯域では周波数特性が顕著に異なっており、電波暗室Aでは31MHz、45MHzにピークが現れているのに対し、電波暗室Bでは41MHz、51MHzにピークが現れていた。
次に発振器を電源ケーブルに接続し、二基の電波暗室の測定結果を比較した。結果を表1に示す。測定結果の差は最大で16.9dB生じた。対策として電源インピーダンスを安定化させる目的でVHF-LISN(疑似電源回路網)を電源ケーブルに接続したところ、測定結果の差は最大でも3.2dBとなった。
また、VHF-LISNを上述のLED電球の測定に用いたところ図2に示すような比較的一致した結果が得られた。
図1 LED電球の放射エミッション測定結果
図2 LED電球の放射エミッション測定結果(VHF-LISN使用)
3.LED照明の測定方法の検討
30~300MHzの妨害波測定には放射エミッション測定と雑音電力測定がある。LED照明の測定サイト間の結果の差を比較すると、後者の結果が良く一致した(相関係数0.96)。ただし、VHF-LISNを使用した場合は放射エミッション測定でも同程度一致した測定結果が得られた(相関係数0.98)。雑音電力測定が電源ケーブルの放射ノイズのみ測定しているのに対して、放射エミッション測定は供試装置自体の放射ノイズも測定している。したがってLED照明の測定方法としてVHF-LISNを使用した放射エミッション測定がより適切である。
4.まとめ
多摩テクノプラザの二基の電波暗室間で測定結果に差が生じる事例(レベルの差異、ピーク周波数の差異)のデータを取得した。また、VHF-LISNを使用することで電波暗室間の放射エミッション測定の結果の差が少なくなった(相関係数0.84から0.98)。
LED照明の測定方法としはVHF-LISNを使用した放射エミッション測定が適切であることを実験で証明した。
相関係数 | 標準偏差 | 最大差分 | |
---|---|---|---|
発振器+電源ケーブル | 0.84 | 4.1dB | 16.9dB |
発振器+電源ケーブル+VHF-LISN | 0.98 | 0.9dB | 3.2dB |