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腰部締め付けにおける人体形状の変化と衣服圧
菅谷 紘子[発表者]、岩崎 謙次(墨田支所)
1.目的
体形や姿勢の補正下着やスポーツ用衣料、医療用衣料など、衣服圧の高い「着圧」を謳った製品が多く販売されている。都産技研では、弾性ストッキングや着圧設計靴下等の性能評価に、既製剛体のダミーへエアパックセンサを取り付けた測定システムを利用してきた。
しかし、実際のヒトが着用した際の衣服圧と、測定システムによる測定値に差があることが分かっている。特に、腹部や臀部に圧をかけ、身体形状を補整するガードルのようなアイテムの評価は既製剛体ダミーでは難しい。これは、剛体ダミーでは、弾力のある人体皮膚の効果を再現できないことや圧による形状変化を生じないなどが原因だと考えられる。
以上より、本研究では、ヒトが腰部を締め付けるアイテムを着用したときの人体形状の変化と衣服圧についての検討を行い、ヒトに近い評価のできる柔らかなダミーを開発することを目的とした。
2.方法
女性用ガードル等の腰部へ着用するアイテムの品質管理や製品開発における、衣服圧評価に利用できるモデルが少ないことから、着目する部位は女性腰部とした。さらに前述のアイテムのターゲットは中年女性に多いことから、40代から50代女性を被験者とし、形状変化、衣服圧についての検討を行い、開発するダミーについては女性腰部から大腿部を再現することとした。
研究の方法は、(1)被験者データの収集、(2)柔らかダミーの開発の2本立てで行った。
(1)では、人体サイズ、形状、硬さ、アイテム着用時の衣服圧と着用感について検討した。実験は被験者として平均的体型(9号サイズ)の中年女性6名を用いて実施した。サイズと形状は、マルチン計測法及び人体3次元計測装置(浜松ホトニクス株式会社)を用いて測定した。硬さは、組織硬度計(伊藤超短波株式会社)により、主要部の硬さ測定を行った。併せて市販のガードル3種(弱圧、中圧、強圧設計)を用い、衣服圧測定及び主観申告実験を行い、圧力分布と着用感の検討を行った。
(2)では、(1)によるデータを基に、日本人の人体寸法データ(社団法人人間工学研究センター)を参考にし、人体のサイズ、形状、硬さを検討した柔らかダミーを作製した。
3.結果・考察
被験者実験の結果から、中年女性腰部の平均的サイズ、形状及び硬さ分布を把握した。
実験より得られたデータを基に、中年女性腰部の平均的サイズ形状及び硬さに近い柔らかなダミーを作製した。作製ダミーと人体の硬さ分布を図1に示す。ここに示すように従来の剛体ダミーに比較し、人体に近い硬さを再現できた。
また、人体による衣服圧とその時の着用感は、部位ごとに分布が異なることが分かった。図2に腹部の結果を示す。着用感と快不快感については、負の相関がみられることがわかった。
今後、作製ダミーを用いて、更に人体に近い測定ができるよう、改良を加え、企業の品質管理や製品開発へ役立てていきたい。
図1 作製ダミーと人体の硬さ分布
図2 腹部の衣服圧と着用感