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白色干渉計を利用したプラスチックの耐候性評価
清水 研一[発表者]、飛澤 泰樹、山中 寿行(材料技術グループ)、渡邊 禎之、中西 正一(高度分析開発セクター)、榎本 一郎(墨田支所)
1.はじめに
プラスチックの耐候性は促進耐候試験機や屋外に曝露した試験片の強度を特定の条件で測定し、暴露時間の関数として使用限界時間を推定する方法で評価されている。ところが、特定の条件で測定した強度からは使用限界時間の推定が困難なことがある。表面性状の変化は力学的な性質、特に破壊現象に大きな影響を与える。このため、力学物性試験に加え、曝露した試験片の表面形態測定を行うことによって、より敏感な劣化の捕捉が可能になると期待できる。そこで、促進耐候試験機に曝露したプラスチック成形品について、力学物性測定に加え走査型白色干渉計による表面性状測定を行い、プラスチックの耐候性評価に表面性状測定を用いることの有効性について検討した。
2.実験方法
市販のポリプロピレン(PP)とポリカーボネート(PC)を射出成形して試験片を作製した。促進耐候試験はブラックパネル温度63±2℃に設定した促進耐候試験機で放射照度180W/m2、2時間中18分水噴霧する条件で行った。曲げ試験は材料試験機に暴露面が引張面となるように試験片を配置し、支点間距離64mm、試験速度2mm/minで行った。ポリカーボネート試験片についてはひょう量15Jのシャルピー衝撃試験機を用いて、曝露面を引張面としたノッチなしフラットワイズ試験を行った。表面性状観察および粗さ測定は、走査型白色干渉計を用いて行った。使用した対物レンズ、接眼レンズはそれぞれ50倍、0.5倍であり、最小分解能0.88μm、Z軸方向の走査長さ150μmとした。表面性状粗さ解析には装置に付属の解析ソフトを供した。
3.結果・考察
図1に促進耐候性試験機での曝露時間と曲げ強さの関係を示す。PPの曲げ強さは、曝露時間の増加とともに徐々に低下し曝露時間800時間では初期値の8割程度まで低下した。一方、PCでは曝露時間が長くなっても曲げ強さはほとんど一定であった。しかしながら、シャルピー衝撃値はわずか300時間の曝露によって大きく低下し、曲げ強さでは検出できないが劣化は着実に進行していた。図2に曝露時間と算術平均粗さ(Ra)の関係を示す。PPのRaは曝露時間500時間経過時から増大したが、300時間まではほぼ一定で推移した。PCの Raは暴露時間100時間でいったん低下した後、300時間経過時から次第に増加した。つまりRaの変化はPPでは静的な曲げ試験に遅れるが、PCではシャルピー衝撃値の変化とほぼ一致し、静的な曲げ試験では捉えられない劣化を検出できた。
図1 曝露時間と曲げ強さの関係 | 図2 曝露時間と算術平均粗さの関係 |
4.まとめ
Raは劣化が進行すると確実に増大した。したがって、ある特定の力学物性試験を選択したがために強度の低下を捕捉できなかった場合の補助的劣化指標として有効であることが明らかとなった。