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赤外線分光反射率の測定精度向上
中島 敏晴[発表者]、中村 宏隆、海老沢 瑞枝(光音技術グループ)
1.はじめに
最近、赤外線領域で使用される光学測定器をはじめとして、加熱システムや熱物性装置、レーザー応用機器などに使用される反射材などの正確な特性評価が求められている。
都産技研では、赤外線領域の中で2から20μmの波長域における分光反射率測定を、正反射率と全反射率の二つの方法で評価している。この測定では、基準とするミラーは光学メーカ市販の金ミラーを使用するが、値付けされたものではなく、金ミラーの反射率を100%としたときの相対反射率で評価している。正確な反射率特性評価のためには、値付けされた基準反射板の整備が不可欠であり、このためには分光反射率の測定精度の向上を図る必要がある。
本研究では、測定精度向上のために導入した絶対反射率測定用アクセサリ(以下、STAR GEM)を用いて、都産技研設置のFT-IR(Agilent680FT-IR)との整合性や測定データの再現性および信頼性などの評価を行った。
2.実験方法
FT-IR試料室に設置したSTAR GEMの外観を図1に示す。実験に先立ち、STAR GEMをNPL標準反射板(英国物理研究所 波長域2.5から56.0μm入射角8度 現在供給停止)を用いて性能評価を行った。
実験では、依頼試験で基準ミラーとして使用している金ミラーやアルミミラーについて、STAR GEMを用いて反射率測定を実施した。
データの信頼性の検証方法として、理科年表掲載の反射率データや、文献掲載の金やアルミなど金属材料の屈折率や消衰係数を、金属の反射率計算式を用いて算出した反射率を比較対象とした。また、データの再現性の確認も行った。
図1 FT-IR試料室に設置したSTAR GEM
3.結果・考察
アクセサリの性能評価の結果、NPL標準反射板とのばらつきは、5から20μmの波長域で0.3%以内であった。市販金ミラーの絶対反射率測定結果を図2に示す。再現性は、2.0から2.5μm付近ではやや低下するが、2.5μmから20μmの波長域では±0.5%以内であった。また反射率計算値との比較は、CO2やH2Oの吸収帯域以外では0.6%以内のばらつきであった。
図2 市販金ミラーの絶対反射率と計算による反射率
4.まとめ
本研究の結果から、波長域2から20μmで絶対反射率の評価が可能であることがわかった。今後は、さらに測定の精度を高め、信頼性向上を図ることで、赤外線領域における絶対反射率測定を依頼試験として対応可能な体制の整備を進めていく。