本文
リン酸処理した薄型テレビガラス発泡体のリン酸肥料効果
中澤 亮二[発表者]、佐々木 直里(環境技術グループ)、小山 秀美(繊維・化学グループ)、
南 晴文、坂本 浩介、松浦 里江(東京都農林総合研究センター)、荻原 明、都竹 進、西野 芳紀、越智 健一、須永 竹英(電子情報技術産業協会)
1.はじめに
近年ブラウン管テレビから薄型テレビへの移行が進んでいる。このような現状を踏まえ、家電リサイクル法の指定品目の見直しが行われ、2009年4月からは薄型テレビ(液晶テレビ(以下LCD)およびプラズマテレビ(PDP))も指定品目に追加された。そのため、比較的大きな重量割合を占めているパネルガラスの再資源化が必須となっている。一方、都産技研では、排出されるリン酸による水質汚濁、枯渇しつつあるリン酸資源の確保、ビンガラスの再資源化、等の課題解決に貢献するため、ガラス発泡体によるリン酸の再循環利用システムを提案してきた。このガラス発泡体とはビンガラスパウダーに炭酸カルシウム等の炭酸塩を混合、高温にて焼成し生成する多孔質資材である。そこで前報ではリン酸吸着用ガラス発泡体について、原料ガラスとしてのLCD・PDPガラスの代替可能性を検討した。その結果、ビンガラスを主原料とし、LCDガラスを10wt%もしくはPDPガラスを25wt%混合することで、生成するガラス発泡体のリン酸吸着能および吸水能が向上することが明らかになった。そこで本研究では、排水処理に使用済のガラス発泡体のリン酸肥料としての利用可能性を検討するため、リン酸処理した薄型テレビガラス発泡体のリン酸肥料効果について検討した。
2.実験方法
ガラス発泡体の製造はガラス発泡体メーカーの協力を得て、量産用トンネル炉を使用して行った。主原料であるビンガラス粉砕物はガラス発泡体メーカーから供給を受けた。このビンガラスの一部を薄型パネルガラス粉砕物(粒径90μm以下)で置きかえ(LCD10wt%、PDP25wt%)、さらに発泡剤としてドロマイト(CaMg(CO3)2)を10wt%添加後、最高温度850℃を20分間保持する条件で焼成した。焼成物を粒径1から2mmに篩別した。この発泡体を5倍容の1000mg-P/Lリン酸二水素カリウム水溶液(pH7.0)に1週間浸漬した。浸漬後、上清をすて、新たなリン酸二水素カリウム水溶液に交換しさらに1週間浸漬した。リン酸処理済ガラス発泡体のク溶性リン酸を測定後、植物栽培試験に供試した。
植物栽培試験については、供試植物としてホウレンソウを用い、基本土壌としては赤土にピートモスを3:2の比で混合したものを用いた。(1)リン酸吸着済ガラス発泡体施用(リン酸成分量5.3g)、(2)リン酸吸着ガラス発泡体2倍量施用(3)リン酸吸着ガラス発泡体1/2倍量施用、(4)リン酸化学肥料施用、(5)リン酸化学肥料無施用の5条件を設定した。収穫時の最大葉長、地上部重および植物体中リン酸濃度を測定した。試験期間は2カ月間とした。
3.結果・考察
リン酸吸着ガラス発泡体が生長量に及ぼす効果については、リン酸吸着済ガラス発泡体施用条件は、リン酸化学肥料施用条件と同等の生長量を示した(図1)。植物体中のリン酸(P2O5)濃度は、土壌に施用したリン酸吸着済ガラス発泡体量に対応して(2)(1)(3)の順に小さくなった。また、そのリン酸濃度は(1)と(4)では大差なく、リン酸吸着済ガラス発泡体に吸着したリン酸が施用リン酸と同等の効果があることが示唆された。
図1 薄型テレビガラス発泡体の肥料試験状況
4.まとめ
薄型ガラス発泡体に吸着されたリン酸には肥料効果があることが確認された。