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金属ナノドットアレイのLSPR特性
加沢 エリト[発表者](電子半導体技術グループ)
1.はじめに
局在表面プラズモン共鳴(LSPR)は、ナノ粒子近傍の誘電率変化に応じて透過光の共鳴波長がシフトする現象である。図1にAuナノドットアレイのLSPR特性を示す。LSPRを用いたセンサは、化学センサとしての製品化に期待が持てるが、そのためには製造コストを低減していく必要がある。そこで、LSPRセンサの主要材料を Au から安価な金属に置き換えることを検討した。
図1 AuナノドットのLSPR特性
2.実験方法
一般的に用いられる金属コロイド分散法ではナノ粒子を等間隔、かつ均一に配置することが難しいため、結果としてセンサ感度が低くなる。そこで、本研究では電子線リソグラフィ技術を用いて金属ナノドットを均一に配置することでセンサの感度向上を図った。実験に用いた金属はAu、Ag、Al、Cu、Ni、Ptの6種類である。Ptは高価な金属なのでコスト低減には寄与しないが、特許文献に使用例があったので確認のため実験した。センサとしての性能を評価するために、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、2-プロパノール(IPA)を滴下した時の共鳴波長の推移を比較した。
3.結果・考察
直径450nm、高さ62nmの金属ナノドットを800nm間隔で格子状に配置した時のLSPR特性を図2に示す。Au に対してAl、Ni、Ptの共鳴特性がブロードであり、特にNi、Ptの特性はセンサ利用には適さないものであった。一方、Cuの共鳴特性は Auの特性にほぼ一致しており、Agの共鳴特性はAu以上にシャープなものであった。また、周囲媒質変化への応答性を表すものとして、特定波長における光強度変化をセンサの性能指標として定め、各種金属の性能を比較した。Ag、Al、AuおよびCuの性能指標を図3に示す。AgはAu以上の性能を示し、CuはAuと同等の性能を示した。金属の導電性が共鳴特性に反映されると考えられる。
図2 各種金属のLSPR特性
図3 性能指標の比較
4.まとめ
LSPRセンサの低コスト化を目的に、ナノドットアレイの材料を高価なAuから他の安価な金属材料に置き換えることを検討した。Ag、Al、Cu、Ni、Ptナノドットを試作評価した結果、Ag、CuがAuと同等またはそれ以上のLSPR特性を示すことを確認した。LSPRセンサの低コスト化に期待が持てる結果となった。本研究の一部は独立行政法人科学技術振興機構(JST)東京都地域結集研究開発プログラムのもとで実施されたものである。