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コバルト・セリウム系酸化物触媒の成形技術とヤニ処理への応用

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

染川 正一[発表者]、萩原 利哉(材料技術グループ・地域結集事業推進室 兼務)、藤井 恭子(バイオ応用技術グループ・地域結集事業推進室 兼務)、
篠田 勉、小島 正行(地域結集事業推進室)、堂免 一成(東京大学大学院工学系研究科)

1.はじめに

  VOC(揮発性有機化合物)の大気中への排出は環境や健康に悪影響を及ぼすため問題視されている。触媒燃焼法は比較的低温でのVOC処理を可能にする。触媒は通常粉末であることが多いが、大量の排ガスを処理する実機においては粉末状では流通ガスの詰まりが生じるために、成形体に加工する必要がある。今回はこれまで我々が白金代替材料として開発してきたVOC分解用のコバルト・セリウム(Co・Ce)系酸化物触媒の成形技術に関する検討とそれら物性の解析を行った。
  一方、塗装工場乾燥炉などから排出されるヤニ類もVOCと並んで問題となる。今回は実際の塗装工場の乾燥炉からヤニを採取し、そのヤニの定性分析と、開発したCo・Ce系酸化物触媒を用いたヤニの分解処理に関する基礎的な研究を行った。

2.実験方法

  触媒粉末とバインダー(カオリン10wt%)、適量の水を混ぜ、それを押し出し成形機に投入し、最終的に焼成することでペレット状成形触媒を作製した(図1)。ヤニ分解実験については、工場で採取したヤニ(図2)を良溶媒溶解後に貧溶媒に滴下し、沈殿を生成させる溶媒再沈法で分離精製した。分離した成分を濃縮後、赤外分光分析装置(IR)によって同定を行った。また示差熱・熱重量同時測定装置(TG-DTA)を用いて、ヤニ単体と触媒表面上に約25wt%付着させたヤニの分解特性の解析を行った。

押し出し成形の様子の写真
図1  押し出し成形の様子
ダクト内のヤニの写真
図2 ダクト内のヤニ

3.結果・考察

  各種酸化物を押し出し成形法でペレット化した際の強度を表1に示す。比較のために市販活性炭強度も測定した。Cr、Cu、Co、Ti、Zn、Mgの酸化物は成形体強度保持性を有していた。Co酸化物の強度保持作用によって、安価な押し出し成形法でもCo・Ce系触媒の成形が可能であり、排ガス処理に利用できることが分かった。
  ヤニ分解の結果は図3に示す。重量変化から、開発触媒上ではヤニは350℃でほぼ100%分解していることが分かる。白金触媒は450から500℃を要した。示差熱(反応熱に相当)のピークも開発触媒の温度のほうが低かった。

表1 成形体の強度
成形体の強度の表

ヤニの分解特性の図
図3 ヤニの分解特性

4.まとめ

  Co酸化物の強度保持性ゆえに少ないバインダー量でも押し出し成形法でCo・Ce酸化物の成形体作製が可能であった。開発したCo・Ce系酸化物触媒は白金触媒より約100℃低い350℃でヤニを分解できた。

 


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