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走査電子顕微鏡 (SEM)は、細く絞った電子ビームで試料表面を走査し、そこから発生する様々な信号(図1)を用いて、試料の表面構造の観察や組成の分析などを行う装置です。光学顕微鏡では観察不可能な微小な表面構造を鮮明に観察することができます。また、焦点深度が深い像が得られることから、凹凸の激しい試料表面の構造を拡大して、肉眼で物を見るのと同じような感覚で、三次元的な画像を観察できます。さらに、付属するエネルギー分散形X線分析(EDS)装置により、電子ビームによって励起された、元素ごとに固有のエネルギーをもつ特性X線を検出することで定性分析を行うことができます。定性分析は観察している視野全体だけでなく、視野の一部範囲の点・線・面分析も可能です。
図1 電子線と試料との相互作用
東京都立産業技術研究センターでは、2種類のEDS分析装置を備え付けた電界放出形SEM(FE-SEM)を新たに導入し、2024年4月より依頼試験を開始しました。
導入したFE-SEMは高輝度の冷陰極電界放出形電子銃を搭載しており、低エネルギー条件でも高い分解能を維持します。また、セミインレンズ対物レンズを搭載しており、低エネルギー/低電流条件でも高いS/Nの画像を取得可能です。セミインレンズ方式は漏れ磁場を利用することで、アウトレンズ方式よりも短い作動距離で試料を観察することが可能です。ただし、試料がレンズの強い磁場内に置かれる都合上、磁性体の観察には適しません(図2)。
図2 SEMの対物レンズの種類 (a) アウトレンズ方式 (b) セミインレンズ方式
EDS装置は、特性X線検出部前に真空隔壁がある従来のタイプと、真空隔壁がないウインドウレス型との2種類を備えており、必要に応じて使い分けが可能です。特に、後者のウインドウレス型では、真空隔壁によるX線吸収が無いため、低エネルギーの特性X線の検出感度が良く、軽元素のピークや、重元素の低エネルギーピークを検出・解析できます。また、分析に最適な作動距離が4 mmと非常に短いため、高分解能のSEM観察と同じ作動距離で分析を行うことが可能です。
酸化チタンナノロッドに金ナノ粒子を担持したサンプル(粉末状)をカーボンテープで試料台に固定し、加速電圧5 kV、作動距離4 mmで観察・分析した事例です。大きさ約10~20 nmの金ナノ粒子の観察と分析(元素マッピング)を行いました(図3)。
図3 酸化チタンナノロッド上に担持された金ナノ粒子のSEM-EDS(元素マッピング)
高倍率・高分解能のSEM像撮影や、従来のEDSでは難しかった低エネルギーのピーク検出・分析にご活用ください。
仕様および利用料金については下記設備ページをご覧ください。
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