都産技研多摩テクノプラザ電子技術グループは、昨年度に引き続きアグリビジネス創出フェアに出展しました。アグリビジネス創出フェアは、毎年秋に行われる農林水産省主催の展示会で、全国の産学官の機関が有する農林水産・食品分野などの最新の研究成果を展示する技術交流の場です。今年度は、2023年11月20日(月曜日)から11月22日(水曜日)までの3日間、東京ビッグサイト南2ホールで開催されました。
電子技術グループは、産業支援で培ったIT技術を農業分野へ展開することを目的とし、東京都農林水産振興財団東京都農林総合研究センターと連携しながら都内中小企業の農業関連の製品化のための研究事業を進めています。今年度は、その中から研究成果2件を紹介した内容を報告します。
このセンサーは、大起理化工業株式会社(埼玉県鴻巣市)、東京都農林総合研究センター、東京都立産業技術研究センター(電子技術グループ)の3機関が共同で開発したものです。東京都農林総合研究センターが開発した養液栽培システム(東京エコポニック)をベースに、IoT機器を組み合わせたシステムに搭載することを想定しております。従来の土壌と比べてヤシガラ培地は空気の層が多いため、水分率(体積含水率)を測定することが困難でしたが、センサーの形状ならびに構造を工夫することで、ヤシガラ培地の水分率の計測が可能となっております。この水分センサーと東京エコポニックを用いたトマト栽培の実証実験では、収量の増加や品質の向上へとつながりました。
ヤシガラ水分センサのサンプル
この技術は、東京都立産業技術研究センター(電子技術グループ)、のぞみ株式会社(東京都多摩市)、東京都農林総合研究センターの3機関が共同で研究を行ったものです。従来、主に防災用途で使用されていた429 MHz帯の無線通信を、農業分野に適用することを試みました。429 MHz帯無線は、小電力でありながら屋外における遠隔無線通信を可能とし普及が進んでいる920 MHz帯無線と比較して遜色のない伝搬特性が得られるほか、作物の葉に含まれる水分の影響を受けにくい特性を持ちます。施設栽培を模した環境において、葉を模した水膜による自遊空間伝搬への影響、床面や近傍の金属製柱、配電盤等の反射の影響を受け易いことなどが、多摩テクノプラザに設置されている電波暗室での実験結果より明らかになりました。またこの無線は、作物の生育状況を確認するための光に関するデータの通信に利用します。太陽光が作物の葉や果実により反射や透過する特性が、生育状況により変動することを確認したことから、栽培管理の目安や収穫適期の予測に活用することが期待できます。これまで農業従事者の視覚と経験に頼っていた部分を見える化し、あらたな人材の就農支援と農家の事業継承に役立てることができます。
429 MHz帯受信デモのサンプル
3日間の展示を通じて、都産技研のブースに多くの方がご来場され、都産技研にご興味を持っていただけましたことに感謝いたします。「都産技研の名や事業をはじめて知った。」ほか、「センサーの特徴やデータ収集・活用方法についてどのような仕組みか。」「これらの研究成果を利用してみたい。」など、さまざまなご質問、ご意見をいただけました。今後の農業分野への研究事業への取り組みの参考とさせていただきます。今年の展示は、東京都農林総合研究センターのブースが隣合わせでした。ご来場の方には連携による研究事業の取り組みも紹介しました。引き続き農業分野を含めた電子応用技術の開発を進めて参りたいと考えています。ぜひ多摩テクノプラザ電子技術グループのご利用をお待ちしております。
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多摩テクノプラザ
電子技術グループ
主任研究員
右 中川 善継(なかがわ よしつぐ)
左 佐野 宏靖(さの ひろやす)
※記事中の情報は掲載当時のものとなります。