双方向散乱分布関数(BSDFまたはBRDF/BTDF)は、物体に照射された光がどの方向にどの程度散乱するかを表す指標であり、照明製品に用いる部材の光拡散特性、自動車の塗装面評価、化粧品の質感評価等に利用されています。本記事では、BSDFを概説し、都産技研が保有するBSDF測定装置とその活用例についてご紹介します。
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双方向散乱分布関数(BSDF: Bidirectional Scattering Distribution Function)は、物体に照射された光がどのような角度にどの程度反射または透過するかを表す指標であり、図1のように、反射成分をBRDF、透過成分をBTDFとよびます。塗装面のマット感やグロス感といった感覚や、すりガラス越しの物体の見え方などは、光の散乱度合い、すなわちBSDFの違いによるものであり(図2)、BSDFを測定することで、製品の質感評価等を行うことができます。近年では、コンピュータグラフィックス(CG)の分野でも、よりリアルな質感表現のためにCG作成時の入力パラーメータにBSDFの測定データを入れるなどで活用されています。
図1 BSDF(BRDF/BTDF)の概念図
図2 光の散乱度合いによる物体の見え方の違い
BSDFは、図3のように試料内の測定点を中心とした球面上に光源と検出器を配置し、これらをさまざまな位置に移動させ、光の照射と検出を行うことで測定を行います。光源と検出器の可動軸は計四つ(αi, αs, βi, βs)あり、これらを独立して制御する必要があります。都産技研で保有するBSDF測定器(GCMS-11:株式会社村上色彩技術研究所製)は、上記4軸の設定によりBSDFの測定が可能です(図4)。加えて、長時間測定時に問題となる光源の出力揺らぎを補正する機構が備わっています。また、検出器には分光器を採用しており、波長毎(380-780 nm)の測定も可能です。
図3 BSDFの測定原理図
図4 BSDF測定装置内部の構造
図5(a)のようなLEDチップと拡散カバーにより構成される直管型LEDを開発する例を紹介します。直管型LEDの正面方向の発光分布は、図5(b)のようにカバーの光拡散性の違いにより差が生じます。カバーの光拡散性は目視によりある程度判別できますが、目的の発光分布を得るためには、さまざまな材質のカバーを用いて試作し、評価する必要があります。カバーのBSDFを測定することにより、図5(c)のように光拡散に関する定量的なデータが得られ、光線追跡シミュレーションの活用などにより、コンピュータ上での試作・評価が可能となり、製品の開発期間の短縮や開発コストの削減につなげることができます。
図5 (a) 直管型LEDの外観
(b) カバーの光拡散性の違いによる直管型LEDの見え方の変化
(c) カバーの光拡散部材毎のBSDF特性
都産技研の保有するBSDF測定装置についてご紹介させていただきました。本装置は、依頼試験にてご利用いただけます。
今回ご紹介させていただいたBSDF測定だけでなく、各種測光機器を取りそろえておりますので、ご関心をお持ちの方はぜひご相談ください。
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