都産技研では、2024年度から「クラウドと連携した 5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業」をスタートしました。これまでの5G・IoT・ロボットの取り組みを踏まえ、新事業ではどのような開発支援を行うのか、情報システム技術部 部長 谷口 昌平に話を聞きました。
都産技研では、2015年に「ロボット産業活性化事業」を立ち上げ、その後はIoTや5Gへと分野を広げていき、2020年からは「中小企業の5G・IoT・ロボット普及促進事業」として技術開発を支援してきました。依頼試験・機器利用・OM型技術支援や技術相談といった一般的な技術支援のほか、都産技研が中小企業に研究開発を委託し、保有する技術シーズや施設等を利用して製品開発・事業化を行う「公募型共同研究」では、既に多く成果が生まれています。
「自動巡視点検ロボットや介護施設向け見守りロボットといった、人手不足をロボットで解消する取り組みをはじめ、既に実用化され、現場で稼働しているものもあります。また、これらの通信環境を支えるローカル5Gについても、オープンソースの活用による基地局キットなどの開発を支援しました。」(谷口)
情報システム技術部 部長 谷口 昌平
この後継事業となる「クラウドと連携した 5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業」は、従来の5G・IoT・ロボットの技術開発に加え、「クラウド」というキーワードを含めました。
「5G・IoT・ロボットの技術開発において、AI活用やクラウド活用は今や切っても切り離せないものになりました。また、先端技術分野では相互の関連性が強く、分野横断的な技術開発の支援ニーズはますます高まると考えられます。このニーズに都産技研として対応すべく、新たな後継事業をスタートさせました」
2024年度からの「クラウドと連携した5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業」では、公募型共同研究を「開発型研究」と「実証型研究」の2つに分け、共同研究テーマを募集する予定です。
「開発型研究」は、従来と同様に製品開発を目的にしていますが、5G・IoT・ロボットの製品開発に加え、クラウドと連携した機器同士の連携や遠隔操作をはじめ、仮想空間を使った取り組みについても支援を行います。
また、今回新しく追加された「実証型研究」は、製品の実証試験についての共同研究です。ビル内や道路など、実際に製品が使用される場所で走行試験をし、安全性の確認や課題の洗い出しなどを行います。
「以前から『実験室では正常動作を確認したが、実用化に向けて実環境で動作を確かめたい』という要望をいただいており、今回新たな支援として追加いたしました。都産技研の研究員立ち会いの下、屋内・屋外での実証実験を考えています」(谷口)
たとえば建物内においてロボットを活用するためには、エレベーターによる上下階の移動も必要ですが、ロボットが自律的にエレベーターを使用するには、乗り降りの際の操作を無線通信で行うほか、人が降りられるよう横に避けたり、満員の際は次のカゴを待ったりなど、さまざまな動作検証をパスする必要があります。DX推進センターでは、建屋内のエレベーターを改修し、こうした検証を可能とする環境の整備を予定しています。
「防災分野などではドローンの活躍も目覚ましいため、今回からドローンの動作検証にも対応する予定です。DX推進センターには、約10メートル×約15メートルの広さを持つロボット用の『傾斜路走行試験装置』がありますので、ここでドローンを飛ばすことを想定し、解析用のカメラや安全対策用のネットなどの設置を考えています」(谷口)
傾斜路走行試験装置
今回の「クラウドと連携した 5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業」では、メーカーだけでなく、サービス提供側であるSIerなどの利用も期待されています。
「どんなに性能の良い製品でも、ユーザーが現場でどのように使用し、何を求めているかを把握していなければ、世に広まることは難しいでしょう。ユーザーに近いサービス提供側の企業が、実証型研究を利用してユーザーの声を聞くことで、より良い製品が生まれることを期待しています」
物流や農業、建築現場など、5G・IoT・ロボットが利活用される分野は広がりつつあります。「これまでも各分野で横断的な支援をしてきましたが、さらにその取り組みを加速していきます」と谷口は話します。
「内閣府が提唱する『Society 5.0』では、さまざまな先進技術を高度に融合させることで、社会的課題の解決を目指しています。5G・IoT・ロボット、そしてクラウドは、その基盤となる技術です。先端技術の社会実装に向けて、新たな支援事業をぜひご活用いただければと思います」(谷口)
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情報システム技術部
部長
谷口 昌平(たにぐち しょうへい)
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