都産技研では2022年度に開始したフードテックによる製品開発支援事業の人材育成の一環として、食品業界の最新動向や都産技研の技術情報を提供するセミナーを2023年度にオンラインで3回実施しました。大変好評いただきましたセミナーの講演内容をレポートします。最後に2024年度のセミナー情報も案内します。
食品技術センター TEL. 03-5256-9251
第一回セミナ―では、食品業界で関心が高い、香りと味に注目しました。
前半では産業技術総合研究所上級主任研究員の小早川達氏を講師にお迎えし、「「味」とはなんですか?ー味への認知科学からのアプローチと応用ー」をお話しいただきました。「味」の知覚・認知は食において大きな役割を果たしているが、「味」が「味覚」と等価ではないことは意外と知られていません。講演では「味」における味覚・嗅覚の関係を心理物理的な手法、脳機能計測の結果を元にお話しいただきました。また最近携わっている口腔内のフレーバーリリースの見える化、ビッグデータを用いての日本人の嗅覚マップなどの話題も取り上げていただきました。
後半では、立命館大学教授の和田有史氏を講師に迎え、「食における五感の相互作用とその拡張」をお話しいただきました。現在の認知科学は、我々の認識が複数の感覚情報が統合されて形成されることを支持しているとの基本的な概念をご説明いただいて、味嗅覚を中心として食における感覚間相互作用のあり様、そしてそれを拡張する情報技術や新食品開発にどのように認知科学が貢献していくかをお話しいただきました。
第二回セミナ―では、当センターが保有する各種顕微鏡の製品開発への活用方法を紹介しました。前半では、既存の観察機器に加え、新たに導入されたデジタルマイクロスコープおよび共焦点レーザー顕微鏡の観察事例を交えて紹介しました。
後半では、東京家政大学・キユーピー共同研究講座タマゴのおいしさ研究所特命教授の峯木眞知子氏を講師に迎え、「製品開発における観察の活用法」をお話しいただきました。食品の組織構造は食品のテクスチャーに関連し、食べ物の味はそこに含まれる成分の種類と量に関連することをご説明いただきました。種々の顕微鏡を用いて、その食品の組織構造を画像解析など行うことで、食べ物の味や香りの成分が食べ物の中にどのように存在し分布するかを見ることができ、これらのデータはおいしさを分析し、商品開発につなげることができることをお話しいただきました。
第三回セミナ―では、食品業界の国内外の市場動向に注目しました。
前半では、GlobalDataコンシューマーセクター・リードアナリストの小西美江氏を講師に迎え、「世界の食品業界に影響を与える5大テーマ」をお話しいただきました。昨今の世界の食品産業は、不透明な経済・地政学的状況、環境問題、コロナ後の健康意識の高まり、フードテックの開発や発展など、さまざまな事情に左右されています。講演ではグローバル視点から見た業界に大きく影響を与えているテーマを5つ取り上げ、テーマ別に企業の動きや業界における課題、今後の見通しなどをお話しいただきました。
後半では、株式会社インテージ 生活者研究センター センター長の田中宏昌氏を講師に迎え、「「Well-being と食」の現在地から未来を展望する」をお話しいただきました。「人生100年」と言われる時代において「健康」の価値がますます高まっています。この健康(=Well-being)をカタチ創るさまざまな構成要素の中で「食」の存在はひときわ輝きを放っています。講演ではコロナインパクトにより変化した生活意識や価値観、消費行動について「Well-beingと食」という観点から読み解きを試みるとともに、ミライへのヒントをお話しいただきました。
2024年度も2回開催予定しており、第一回目は7月19日(金曜日)に食品技術センターにて対面で開催します。岩手大学特任教授の三浦靖氏をお迎えし、食品の製造と品質評価にも関わる食品テクスチャー(総合的な物理的食感)の制御および評価法について、具体例を交えてお話しいただきます。また、当センターが保有する測定機器の中でも食品テクスチャー評価に役立つ機器を中心に、活用事例とともに紹介します。最後に当センターの設備や機器の見学もございますので、ぜひご参加ください。
詳細および申込はこちらをご覧ください。
「食品開発における食品テクスチャーの活用法(外部リンク)」
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フードテックによる製品開発支援事業(外部リンク)
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