都産技研では、主に都内中小企業の方々を対象に、各種技術セミナー・講習会を開催しています。コロナ禍以降、オンラインセミナーの需要が高まるなか、セミナーの様子を収録した動画をアーカイブ配信する「オンデマンド配信」を推進し、2022年度より新システムによる配信を開始いたしました。
新たなオンデマンド配信環境を導入した経緯や、新システム稼働後の反響、今後の展望について、都産技研技術支援部技術振興室の飛澤泰樹技術セミナー係長に話を聞きました。
都産技研では、最新技術や産業動向に関する「技術セミナー」や、講義と実習により実践的な内容を学ぶ「講習会」を定期的に開催しています。テーマは多岐にわたり、金属加工や電気、光、バイオテクノロジー、デザインなど、都産技研の持つ技術シーズについて、基礎的な内容から最新トピックまで幅広く取り上げています。
技術セミナー・講習会は、現在四つの形式で開催されています。都産技研に来所して受講いただく「リアル開催」、オンラインによる「ライブ配信」、リアル開催とライブ配信を同時に行う「ハイブリッド開催」、そしてあらかじめ録画した講義動画を配信する「オンデマンド配信」です。このうちオンデマンド配信については、コロナ禍で急きょ対応したこともあり、セキュリティ面に課題を抱えていました。
「当初オンデマンド配信は、ライブ配信と同様にウェブ会議システムを利用して行っていました。ところが、当時利用していたウェブ会議システムは、個別にアップロードした動画を共有する仕様になっており、動画のダウンロード防止対策が不十分であることが分かりました。技術セミナー・講習会は有料で開催しており、申し込んだ受講者のみ閲覧できるようにするには、改めて配信環境を整える必要がありました」(飛澤)
また、オンデマンド配信はURLとパスワードさえあれば閲覧が可能になるため、第三者に情報が渡ると動画が閲覧できてしまうという懸念もありました。そこで、受講者の本人確認を強化し、よりセキュリティの高い配信を可能とするため、新たな動画配信システムの選定および既存システムの活用を進めました。
動画撮影スタジオ
新たな動画配信システムの選定では、「暗号化などのセキュリティ対策が可能であること」「認証の連携が可能であること」などを条件に、40種類近い動画配信システムから該当するものを絞り込みました。最終的に、暗号化ストリーミング配信が可能な動画配信システムを採用することで、第三者によるダウンロード防止を実現することにしました。
さらに、本人確認を強化するために、「ユーザーログイン」と「視聴パスワード」による2段階認証の仕組みを導入しました。オンデマンド配信を視聴する際、受講者はログインページに、都産技研から発行したIDと、自身で設定したパスワードを入力してログインします。ログイン後、自動的に表示された視聴ページに、都産技研から伝えられた視聴パスワードを入力することで、初めて配信を視聴することができます。
「ユーザーログインの仕組みは、セミナー申し込みフォームの作成に用いていた既存ソフトを活用して開発しました。ソフトの設定方法など、公開されている情報が限定的だったこともあり、メーカーへ問い合わせたり、テストを繰り返したりなど、試行錯誤の末に完成させることができました」(飛澤)
また、技術セミナー・講習会を開催する際の規程や手順書についても見直しを行いました。もともと、技術セミナー・講習会は対面形式での開催を前提としており、コロナ禍でオンラインに対応したものの、ルールが曖昧なまま運用していた部分もあったといいます。
「この機会に、オンラインを想定した内容に規定や手順をアップデートしました。たとえばオンデマンド配信については、動画制作や配信における役割分担や、配信日までの想定スケジュールなどを明文化しています。本部をはじめ各支所でも同じルールで運用することになるため、各支所の要望を吸い上げたり、改正案を確認してもらったりなど、調整にも時間をかけました」(飛澤)
ログインパスワード設定画面
こうして2022年7月から、新たな動画配信システムによるオンデマンド配信がスタートしました。2021年度は4件だったオンデマンド配信は、2022年度には36件を実施。特に大きなトラブルはなく、受講者の満足度は5点満点中4.5点と、高い評価を得ることができました。
「動画配信システムを刷新したことにより、視聴プレイヤーも新しくなりました。倍速再生や画質変更に対応することにより、受講者の視聴環境に合わせて最適な設定を選べるようになったのも、満足度の向上につながったと考えています」(飛澤)
視聴ページのイメージ
受講者に記入いただくアンケートの内容も、オンラインに対応できるようにアップデートしました。「講師の話し方(声の大きさ、聞き取りやすさ等)」などの項目を新たに加え、研究員にフィードバックすることで、さらなる技術セミナー・講習会の質の向上を図ります。
「2023年度からは音声読み上げソフトの活用も始まり、より分かりやすい動画を目指して制作に取り組んでいます。将来的には、オンデマンド配信の受講者が自身の視聴履歴などを閲覧できる機能を動画配信システムに追加し、受講者の利便性を高めることで、『次はこのセミナーを受けてみよう』といった新たな機会も生まれやすくなると考えています。技術セミナー・講習会にリピーターが増えることで、都産技研のほかの事業に興味を持つ方も増えたら良いと思います」(飛澤)
Tweet(外部リンク)
※記事中の情報は掲載当時のものとなります。