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第1号(平成10年度)技術ノート

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

概要

1.マイクロファイバー製ローラカバーの試作と塗装特性

鈴木雅洋、木下稔夫(表面技術グループ)、宮岡 厚(株式会社千代田製作所)

建築塗装分野で広く用いられている従来型ナップローラの欠点を克服するため、新しい素材としてマイクロファイバーに着目し、これを用いたローラカバーの開発試作とその塗装特性について検討した。試作したローラカバーはハンド式と圧送式ともに、塗装面は切れ毛や繊維の脱落が少なく薄塗りの平滑面が得られた。特に、従来のローラでは塗装不能であった低粘度塗料の適性が高く、高品位塗装分野への活用が期待できる。

2.無電解Pd-Ag合金めっき浴の開発

水元和成、土井 正、宮島 潔(表面技術グループ)、小島紀徳、上宮成之、英 敬信、梶原昌高、畠山紀子(成蹊大学)

パラジウム(Pd)による薄膜は水素を選択的に溶解・拡散することから、超高純度水素分離用分離膜として注目されている。本研究では、水素によるぜい化が少なく、透過速度に優れるPdと銀(Ag)(PdとAgの比が77:23)の合金めっき膜の作製を目的とし、めっき浴の開発を電気化学的手法を用いて検討した結果、析出速度約3μm/hrで、皮膜組成比率77:23にほぼ一致する浴が得られた。この浴での皮膜の析出は、はじめにAgが析出し、次にPdが析出する2段階の析出反応であった。

3.リソグラフィによる微細電極の作製

加沢エリト、上野 武司、佐々木智憲(電子技術グループ)

近年、マイクロマシンと呼ばれる技術分野が注目されている。マイクロマシン技術の主流は半導体製造技術の応用であり、リソグラフィ技術、薄膜技術、エッチング技術などから構成される。 本研究では、医療用途等に着目されている、電気化学反応測定用微細くし型電極の試作を行ったので報告する。電極作製には、電子線リソグラフィによるパターン形成を用いて、エッチング法、および、リフトオフ法によって金属薄膜を電極加工した。この際、光ファイバに用いられている、アクリル樹脂であるPMMAを電子線加工しリフトオフレジストとして用いた。

4.マイクロ波高温湿度センサの開発

大森 学、寺井幸雄(電子技術グループ)、森澤一義(現 交通局)

本報告は,動作原理が従来の湿度センサと異なる湿度センサの開発に関するものであり、従来センサが抱えていた1.酸・アルカリ等の腐食性ガスや有機溶剤を含んだ雰囲気中で使用不可能、2.高温に弱い等の課題を克服している。新たに考案した湿度測定の方法は、線路長がλ/4の共振線路からの反射減衰特性が共振周波数において急峻にデップし、かつデップ点すなわち共振周波数が湿度に比例して変化すること利用した。測定周波数としては、センサ形状及び感度を勘案し1.2GHzとした。そして測定は、温度が85℃で湿度が50から95RH%の雰囲気中での結果を示した。なお、表1と図1から図5がある。

5.射出成形プラスチックはすば歯車の歯すじ誤差とねじれ角補正

清水秀紀、増澤芳紀(製品科学技術グループ)

射出成形プラスチック歯車において、歯車装置の高性能化を図るため、はすば歯車の利用が増大している。しかし、はすば歯車は、成形収縮によってねじれ角誤差が生じるため、平歯車に比べると一般的に歯すじ誤差における精度が劣るとされている。実用に供されているモジュール0.3から1の射出成形ポリアセタールはすば歯車を対象に歯すじ誤差を測定し、記録線図を基にねじれ角誤差を求め、その発生要因について考察した。さらに、直径方向と歯幅方向との成形収縮率の相違に起因するねじれ角変化を解析し、金型のねじれ角補正方法について提案した。

6.絶縁材料の誘電特性測定における効率化

橋本欣也、小杉正圀、牧野晃浩(電気応用技術グループ)

変成器ブリッジによる測定は、漂遊アドミッタンス及び対地アドミッタンスを補償するため、手動操作によりブリッジの平衡をとることから、操作が煩雑で熟練が必要である。測定には、多くの時間と試料に電極としてすず箔を貼る労力が必要となる。一方、測定器の中には、演算増幅器を用いたブリッジ法を採用したLCRメータがある。本研究では,測定の自動化・高精度化に適した測定器としてLCRメータを用い、各種電極による比誘電率を求めて測定値の比較を行った。その結果から、以下のことが明らかになった。

  • (1)LCRメータを用いた電極非接触法による測定は、誤差が少なく測定値の信頼性は高い。また、すず箔を貼る労力を省くことができる。
  • (2)新たにシールドボックスを試作したことで、すず箔電極を付けて、各種材料のLCRメータによる測定が行えるようになった。

7.焼却炉運転の自動化システム

大畑敏美(情報システム技術グループ)、村川英信(日本炉機工業株式会社)

強制加熱で焼却を効率的に行う自動化システムについて、医療用廃棄物を例に検討した。 焼却炉内を赤外線フィルタを装着したCCDカメラで撮影し、その画像データから「燃焼境界点」を抽出することで、焼却の進行状態が認識できた。 認識した焼却の進行状態により、バーナの火炎を制御し、無駄のない加熱を行う。「燃焼境界点」の判定などにシステムの不安定要素があるが、燃焼部分の中心位置とその範囲および焼却完了信号を得た。 研究は共同開発研究で実施したもので、産業技術研究所は画像処理技術による焼却物の画像認識を担当した。

8.劣化高分子フィルムの生分解性

中澤 敏、山本 真(資源環境技術グループ)

生分解性高分子は廃棄物対策から近年注目され、特に包装材分野において汎用高分子からの代替が期待されている。しかし、廃棄した際の土壌中での分解性が強調され、使用中の耐久性や、使用後(劣化製品)の生分解性に関するデータがない。そこで、劣化させた生分解性高分子を使用して、生分解性の評価をおこなった。また、可塑剤を混合して、影響を検討した。実験には、市販の生分解性高分子フィルムを使用した。また、ペレットとフタル酸系の可塑剤をキャスト法により混合して作製したフィルムも使用した。試料をサンシャインカーボンアーク燈式ウェザーメーターにより劣化させ、当研究所敷地内から採取した土壌および牛糞堆肥を使用して、生分解性の評価を行った。生分解性フィルムは劣化させると硬く脆くなり、土壌のC/N値が大きいほど速く分解された。また、劣化が進行するに従って、天然物系の試料は生分解の速度が遅くなった。微生物系の試料に可塑剤を混合すると、伸びが改善されたが、耐候性試験機による劣化とともに、可塑剤の効果が低下してしまうことがわかった。また、可塑剤を添加することにより、生分解の速度が低下することがわかった。

9.わが国におけるγ線滅菌の実態調査

細渕和成(放射線応用技術グループ)

わが国の放射線滅菌は1969年にはじめて実用化されて以来、急速にディスポーザブル医療用具の滅菌に利用されるようになってきた。しかし、その実態に関しては不明な点が多い。そこで、わが国における放射線滅菌の実態を明らかにするため、60Co-γ線源を有する各企業にアンケート調査を行った。この結果、わが国で生産されている滅菌医療用具等に占めるγ線滅菌の割合は5割を超えていて、酸化エチレンガス滅菌の割合より多いことがわかった。このことは、60Co-γ線源の販売数量が指数関数的に増加していることからも推定された。また、品目別にみたγ線滅菌の占有率は、シリンジでは97%、ダイアライザでは93%、AVFニードルセットでは82%、三方活栓では80%、連結管では75%、血漿分離器では64%、縫合糸では62%、採血針では60%、注射針では59%であった。このように多くの品目でγ線滅菌の占有率が高く、γ線滅菌の導入が進んでいることが明らかになった。

 


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