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顕微鏡試験
印刷用ページを表示する 更新日:2018年1月5日更新
適当な大きさの糸にほぐした後、プレパラートを作製し、光学顕微鏡で繊維の外観(通常は側面のみ。必要に応じて断面)を観察する。この方法は他の試験方法と組み合わせることにより、たいていの繊維の鑑別が可能であり、また天然繊維は当該試験のみで判断できるものが多い。さらには、混紡・交撚品も容易に見分けることができる。しかし、化学繊維は異形断面糸を作ることができるので、顕微鏡試験では判別できないものが多く、また顕微鏡で観察するため、微小領域しか確認できない。表に各種繊維の顕微鏡写真と特徴を示す。なお、化学繊維については写真以外の形状もあるので注意する必要がある。
天然繊維と化学繊維で外観上大きく異なっているのは、糸を構成する繊維の太さである。天然繊維は一本の糸の中にもさまざまな太さの糸があるのに対し、化学繊維は混紡・交撚品以外はすべて同じ太さである場合が多い。
繊維名 | 外観 | 特徴 | |
---|---|---|---|
側面 | 断面 | ||
綿 | 扁平で天然の撚りが見られる。断面はそらまめ状で中空である。 | ||
亜麻 | 苧麻と比較して、側面に突起のある節が見られる。断面は苧麻よりも多角形に近く、中空である。 | ||
苧麻 | 亜麻と比較して、繊維軸と垂直方向に節が見られる。断面は亜麻よりも扁平で、中空である。 | ||
ウール | 側面はうろこ状である(スケールが見られる)。断面は円形である。 | ||
絹(家蚕糸) | 表面は滑らかで、断面は三角形。 | ||
レーヨン | 繊維軸方向に数本の線条が見られる。断面は不規則なのこぎり状を呈する。 | ||
ポリノジック | 表面は滑らかで、断面は円形。 | ||
キュプラ | 表面は滑らかで、断面は円形。 | ||
アセテート | 繊維軸方向に数本の線条が見られる。断面はクローバーの葉状。 | ||
ビニロン | 繊維軸方向に一本の白い線が見られる。断面は扁平なものが多く、U字状のものもある。 | ||
ナイロン | 表面は滑らかで、断面は円形。 | ||
ポリエステル | 表面は滑らかで、断面は円形。 | ||
アクリル (アクリル系) | さまざまな形状のものがある。写真は滑らかで円形であるが、繊維軸方向に一本の線条が見られるもの(断面は馬蹄状)もある。 |
以下に上記以外の特徴的な繊維を示す。
繊維名 | 外観 | 特徴 | |
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側面 | 断面 | ||
アンゴラ | 特徴的なスケールをもつ(電子顕微鏡写真はこちら)とともに、中空(髄)である。また、太い毛は差し毛で、アンゴラは他の獣毛と異なり差し毛も使用する場合が多い。 | ||
野蚕糸 | 通常の絹(家蚕糸)と比較して、扁平で繊維軸方向に筋が見られる。断面は頂点が鋭角な三角形状である。 | ||
異形断面糸1 | 写真はいずれもポリエステルの異形断面糸である。このように、化学繊維は異形断面糸を作ることができるので顕微鏡だけでは判断できない。 | ||
異形断面糸2 (中空糸) |