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ブラックライトによる観察
ブラックライトは紫外領域の光を発する光源である。物質の中には紫外領域の光を吸収して可視領域の光を発する(この光を蛍光という)ものがあり、このような物質にブラックライトを照射すると、通常では目で確認できないものや、不明瞭だったものが明瞭に見えるようになる。
ブラックライトにより蛍光を発する物質には、カビ・バクテリア、蛍光剤、汗・尿、油剤などがある。
また、ブラックライトによる観察は基本的には補助的な手段であり、事故原因を決定するには他の試験と組み合わせて判断する必要がある。
試験方法
通常の光源下で見た場合とブラックライト下で見た場合を比較し、蛍光の有無を確認する。このとき、蛍光の位置や強さ、汚染箇所と蛍光を発する箇所とが一致しているかに注意する。
以下にいくつかの事例を示す。
セーターのところどころに褐色のシミが確認できるが、これはカビによるものである。
ブラックライトで確認すると、シミ部より蛍光が確認できる。蛍光の色についてはカビ・バクテリアの種類によって様々な色となる。なお、カビの場合は変色していない箇所でも、蛍光を発することがある。また、蛍光剤配合の洗剤で洗濯されると、蛍光は確認できなくなる場合が多い。
蛍光剤は紫外領域の光を吸収し、青白い蛍光を発する染料であり、白ものをより白く見せるために洗剤に配合されている。写真のTシャツは本来は生成りの色だったが、ほぼ全体的に白っぽく変色している。
ブラックライトで観察すると、ほぼ全体から青白い蛍光が確認されるとともに、変色の程度が少ないところは蛍光が弱かった。これより、変色は蛍光剤のムラ付きによるものと推定できる。
なお、蛍光剤による汚染と確定するには蛍光剤の抽出を合わせて行うことが望ましい。
汗・尿に含まれるアミノ酸には紫外領域の光を吸収して蛍光を発するものがある。写真のズボンはチャックの脇が黄色く変色している。
ブラックライトで観察すると、黄変部より蛍光が確認されるとともに、黄変箇所と蛍光の発する箇所が一致していた。また、黄変の発生部位を合わせて考えると、黄変は尿によるものと推定できる。