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毛羽の脱落
印刷用ページを表示する 更新日:2018年1月5日更新
解説
素材
毛羽の脱落は主に次に挙げる2つの事故が多い。
- フロック加工製品のフロックの脱落(写真左)
フロック加工とは短く切った繊維(フロック)を、静電気により接着剤を塗布した生地に付着させる加工である。接着剤はアクリル酸エステル樹脂が主流で、他にもウレタン系や酢酸ビニル系の樹脂が使用されている。このうち、酢酸ビニル系の樹脂はドライクリーニング溶剤、特にテトラクロロエチレンで軟化や膨潤しやすく、ドライクリーニング処理時の摩擦でフロックが脱落しやすい。事故は接着樹脂の種類や加工方法によるところが大きく、事故が起こりやすい素材というのは特に決まっていない。
- 獣毛の脱落(写真右)
獣毛製品の毛羽抜けによるクレームは、アンゴラ兎毛の場合が多い。この理由は、アンゴラ兎毛が他の獣毛に比べて直線状を呈し、方向摩擦差が大きく、差し毛を使用しており、しかも、独特の柔らかな風合いを活かすために、甘撚りとしている場合が多いためである。
外観
- フロック加工製品のフロックの脱落
外観は毛羽が脱落し、基布が露出している。部位は、摩擦を受けやすい部位に発生する。また、クリーニング時の場合は、凸となっている部分に生じる場合が多い。
試験
- フロック加工製品のフロックの脱落
ドライクリーニング溶剤を滴下し、接着剤が軟化したり、溶解したりするかどうかを確認する。また、接着剤を赤外分光分析に等により同定することにより、ドライクリーニング溶剤に耐え得るかどうかを判断することもできる。破壊検査が可能な場合はJIS規定の試験方法にて再現試験を行う。フロック加工品の品質基準はA-1法(摩擦試験機を用いる方法のエッジ法)の45R法で300回以上という基準がある。
- 獣毛の脱落
アンゴラ兎毛の鑑別は顕微鏡観察で行うことができる。また、再現試験として財団法人 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)でセロテープ法があり、一般的な基準は当該試験で3級以上といわれている。