本文
汗による変退色
解説
素材
汗による変色は、汗に含まれる成分であるヒスチジン等のアミノ酸や乳酸等、金属と配位結合を生じるような物質により、含金属染料や含金属フィックス剤中の金属が引き抜かれるために起こる。金属を含む染料は、金属媒染染料や金属錯塩染料、直接染料、反応染料があり、また含金属フィックス剤は直接染料に使用される。よって、素材としては、天然繊維およびナイロンが多い。
外観
色相は暖色方向や明るい方向へと変化する。また、部位は汗をかきやすい脇の下や衿回り、背中等に発生する場合が多く、変色は表側よりも肌に近い裏側の方が著しい。
試験
ブラックライトによる観察、塩素イオンの検出(汗には塩化ナトリウムが含まれている)、ニンヒドリン試験によるアミノ酸の検出を行う。ただし、変色部より塩素イオンやアミノ酸が検出されて、かつブラックライトで蛍光が認められたとしても、これらは汗の存在を示すだけであり、変色の原因とは断定できないので、再現試験を行う必要がある。
再現試験はJISに染色堅牢度試験が規定されている。通常の染色堅牢度試験で再現されない場合は、人工汗液中のヒスチジン濃度を高くしたり、実際の汗を使用してみるとよい。
また、脱金属による変色の場合は、硫酸銅水溶液による処理で復色したり、正常部をEDTA水溶液で処理すると変色するので、再現試験としてこれらの試験も有効である。