本文
酸・アルカリによる変色
解説
素材
酸による事故事例は酸性雨や保管中のウールとの接触(ウールは酸性サイドで仕上げられている)、酸性物質を用いたしみ抜き(写真左)などがある。アルカリは消費過程で使用されることはほとんどないので、事例は少ない。酸・アルカリによって色相が変化する染料は多く、一概には言えないが、直接染料、酸性染料、媒染染料(天然染料)は酸・アルカリにより色相変化を生じるものが多い。
外観
色相は酸の付着により暖色へ、アルカリの付着により寒色に変化することが多い。部位は特に決まっていないが、洗濯等の場合は全体に渡って発生し、飛散等により付着した場合は、液状で作用するので、変色は円形でにじむように広がったり、糸に沿って走っていったりしている。なお、セルロース系繊維の場合で硫酸が付着した場合は、脆化を伴う場合が多い。
試験
酸の原因物質としては、塩酸や硫酸、硝酸があり、これらを検出する。ただし、硝酸イオンは金属との反応では沈殿を生じないので、簡易的な方法による定性は難しい(塩素イオンの検出、硫酸根の検出)。合わせてpH試験紙によるpHの測定も行う。ただし、たとえ変色部よりイオンが検出されて、かつ変色部と正常部のpHが大きく異なっていたとしても、これらが変色の原因とは断定できないので、再現試験を行う必要がある。