本文
ボタンの変色
解説
素材
ボタンの色に関する事故は、ボタンからの色泣きと金属ボタンの黒変によるものが多い。
- ボタンからの色泣き(写真左)
ボタンの染色は原料の中に染料または顔料を入れて色を出す先染めと、無地ボタンを各種の色に染色する後染めがある。事故となりやすいのは、不適切な工程により染色された後染め製品に多い。ボタンの染色に使用される染料は、ボタンの素材により酸性染料と分散染料が使用されるが、きちんとした後処理を行えば後者の方が湿潤堅牢度に優れている。よって、酸性染料を使用するラクトボタン等が湿潤堅牢度に劣るといえるが、染料の種類やボタンの種類というよりは、染色工程の不良により事故が生じる場合が多い。
- 金属部分の黒変(写真右)
金属ボタンに使用されている金属の種類には銅、亜鉛、鉄、ニッケルなどがあり、金属の種類によっては、比較的容易に腐食したり、硫黄と反応することにより黒変するものがある。事故は後者が多い。なお、硫化物となることにより黒変する金属は銅、鉛、鉄、ニッケル等で、硫黄の発生源は、ウール、ハイドロサルファイト等の硫黄を含む漂白剤、段ボール、加硫ゴム、温泉等がある。
外観
- ボタンからの色泣き
ボタン周辺に色泣きを生じている。色相は、ボタンと同じか、またはボタンに配合されている色である。
- 金属部分の黒変
ボタンの一部、または全面が黒色に変色している。この事故には硫黄が関与しているため、硫黄発生源の有無について、使用・保管状況を詳細に調査することが必要である。
試験
- ボタンからの色泣き
ボタンの染色堅牢度試験を行う。すなわち、色泣き試験を行う。このとき、試験片の代わりに色泣きを生じたボタンを縫い付ける。
- 金属部分の黒変
金属の定性を行うとともに変色部分および硫黄の発生源と思われるものについてヨウ素・アジ化ナトリウム発泡試験を行う。