本文
酸化防止剤と窒素酸化物の複合作用による黄変
解説
素材
酸化防止剤はプラスチックやポリウレタンなど経時変化により酸化、劣化していく物質に添加されており、このうちジブチルヒドロキシトルエン(BHT)は最も一般的に用いられている。BHTそのものは白色の結晶性粉末であるが、大気中の窒素酸化物と反応し、黄色―茶色の物質を生成する。反応初期の段階では、レモンイエローのような黄色物質が生成し、この段階でクレームとなる場合がほとんどである。この黄色物質は昇華性があり、繊維に窒素酸化物が吸着していて、そこにBHTが昇華、吸着、反応する場合もあれば、昇華性の黄色物質が昇華し、繊維に付着している柔軟剤等の加工剤に濃縮される場合もある。したがって、酸化防止剤を含んでいる製品が存在すれば、どのような素材にも黄変事故は起こり得る。
外観
色相は鮮やかなレモンイエローを呈する(写真)。したがって、白色や淡色の製品にのみ生じる。黄変は酸化防止剤を含んでいる製品(例えばウレタンフォーム、ハンガー、ポリ袋など)と接し、かつ、空気の流通のよいと思われる箇所に生じる。また、事故には窒素酸化物が関与しているので、窒素酸化物が滞留しやすいかどうかなど、使用・保管状況を詳細に調査することが必要である。
試験
- 酸性ガス(例えば酢酸)に暴露すると黄色は消失し、アルカリ性ガス(例えばアンモニア)に暴露すると黄色が再発現する。
- メチルアルコール等の有機溶剤で洗浄すると、黄色が消失する。
- 晴天時に2から3時間、日光に暴露すると、黄色が消失する。これらの条件を満たせば、黄変は酸化防止剤と窒素酸化物の複合作用によるものと判断できる。